こ
Program
1.Stagnarium
演出・構成・振付
鈴木亮祐
出演
石黒桃子/山田菜美子/垣花莉穂/宮悠介
衣装
Kurin
音楽
頃安祐輔
とある男の手記 一部抜粋
最近身体が重い。
朝起きるのさえ辛い。
このままでは駄目だ、と頭では理解している。
新しいことを始めたいと臨む心、何かを成さねばという焦燥感。
ただ、身体が思うように動かない。
足の踏み出し方すら覚束ない。
そうやって幾つもの季節が過ぎてきた。
私は澱んだまま、枯れた姿でどこへも行く気概を持てずにいる。
自嘲めいた笑みを浮かべ、再び目を閉じる。
すると、不思議な景色が広がっていた―
Concept
Stagnarium
「澱む」を意味する"Stagnant"と「場所」を意味する接尾辞"-rium"を合わせた造語。
澱んだまま 季節は過ぎ
枯れても枯れない
澱々(よどよど)と進む生き物
2.かたち
演出・構成・振付・出演
宮悠介
Message
ダンスに限らずリアリティのある表現に心動かされます。
小難しい思考を飛び越えて、その人の人柄が滲み出るような。
今日は至極個人的な踊りをします。堆積する動きと言葉と時間の中で、鈍い痛みを伴いながら微かに芽生える生を探しています。切り取られ炙り出される真意に出会います。剥き出しで出し尽くして絞りカスみたいに残る踊りに興味があります。そして今日、時を共に旅してくださる皆さんに心から感謝しています。
私のかたちを乗り越えてぐしゃぐしゃでも真っ直ぐと。
踊ります。
滞在制作協力:穂の国とよはし芸術劇場PLAT
3.夜露と宇宙船
演出・構成・振付
石黒桃子
出演
山田菜美子/垣花莉穂
鈴木亮祐/藤井陽/鈴田泰啓
Concept
あとほんの少しで、空気の震える音が聞こえてきそうな静かな夜。
昨日見つけた夜露は、朝起きて見ると消えていた。まるではじめから存在しなかったみたいに
ある研究者が、魂の重さは21gだと言っていた。
わたしの受けた生は、消えてしまった夜露と一体何が違ったのだろう
起きても起きても覚めない夢のように、淡々と紡がれていく毎日
宇宙船の窓から覗く景色も、こんな感じなのかしら
現実はどこまでも不明瞭で掴みどころがなく、煩わしくて美しい
この時代、この星に生まれたわたしたちのこと
Message
私たちの頭の中は 自由です。
夜露を見つめながら、遥か彼方の宇宙に夢を膨らませることもできますし、宇宙船の窓から地球を眺めながら、地表の草木を滴るつゆに思いを馳せることだってできます。
意識というものは捉え所がなく、だからこそ私たちは、毎日色々なことを思い悩みます。
今作品では、地球・ここ日本とは異なる文化や世界線を夢想し、環境がまるごと違うような惑星や、そこに住む生物の生活などをモチーフに物語が進行します。
深い深い海の底で昼夜起こっていること。
人の立ち入らない密林で見つけた奇妙な生物。
神話で見たアンドロギュヌスの物語に、
導く者の、知られざる過去世。
決して手を取ってはいけない同調の誘惑。
生き残った男が抱えるささやかな望み。
これらは全て、
私たちが知らなかったはずの世界。
けれど、「もしも」の思考実験を重ね、握りしめていた常識を手放す瞬間が、私は好きです。
航海日誌を片手に、旅をするように目の前の景色が変わっていくうちに、囚われていた執着からスッと自由になれる瞬間があなたにも訪れるかもしれません。
この星に生まれ落ち、この時代のルールで暮らすうちに、「すべきこと」「当たり前」に追い回されて、大切にしていたものがこぼれ落ちていく感覚。
前提が違えば、導き出される結末も違うものです
空間に身を委ね、溢れた感覚を拾って、糸口を探す。
日常を過ごすような自然さで、この作品が受け入れられることを願っています。
当たり前という幻想。
私たちの自由を妨げるものは、いつだって私たちの頭の中にあるのかもしれません。
滞在制作協力:穂の国とよはし芸術劇場PLAT
本日お越しいただいた皆様、
心より感謝申し上げます。
今後の参考とさせていただきたく、
是非アンケートにご協力いただけましたら幸いに存じます。
石黒桃子